年の瀬も迫り、大雪で災害救助法が発令されるなど各地に雪害が発生している12月半ばに、「ねこホーダイ」のことを目にしました。
その驚きと「もらうのも手放すのも月額380円(税込)で」という文言に・・・人は、本当に怒っているときは、震えるのだと感じました。
しかしながら当団体では、来年度「愛玩動物看護師」という環境省と農林水産省を主務省とする国家資格保有者になります。2022年12月27日の西村環境大臣の会見では「当該サービスの実態については事実確認中でございます。詳細が判明した時点で、必要に応じて動物取扱業を管轄する自治体を通じて、対応をして参りたい」と述べています。
環境省が、調査を始めているとのことですので、その結果を待ちたいと、私たちは思います。
当団体では、獣医療に携わり「動物の命」を尊ぶべき人材として、感情論ではなく様々な視点で多角的に考え、今後「命が、サブスクになるようなことがない」社会に戻すための方法を見つけたく存じます。また社会全体で問題だと捉え、解決策や施策をも考えていく必要性を提言します。
◆法的な問題点
動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/nt_r010619_39.html
出典:環境省
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=348AC1000000105
出典:e-GOV法令検索
①2条の「基本原則」に対して、「(動物の)習性を考慮する」「飼養又は保管を行うための環境確保」は、もらわれたり手放されたりする時点で、守られていないのではないか?
(基本原則)
第二条 動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。
2 何人も、動物を取り扱う場合には、その飼養又は保管の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、適切な給餌及び給水、必要な健康の管理並びにその動物の種類、習性等を考慮した飼養又は保管を行うための環境の確保を行わなければならない。
繰り返し出てくる「習性を考慮」。猫は飼い主や家に愛着を形成する習性がありますから、名前も与えられず、飼い主が頻繁に変わる状況では大きなストレスがかかることは想像に難くありません。
こうした観点から、果たしてこのサービスは合法的なものと言えるのかどうか。担当省庁に確認したいと考えています。
また不慣れな状況に置かれた猫の行動を、心理学的な手法により分析した近年の研究では、「猫と人間の絆は人間の親子の絆に近い」ことが判明したと報告されています。猫が、飼い主に対して愛着を示していることもわかっています。
Attachment study shows cats might care about you more than your own child| Inverse
https://www.inverse.com/article/59488-cats-care-about-humans-in-new-study
Attachment bonds between domestic cats and humans: Current Biology
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(19)31086-3
こうした観点から考えますと、果たしてこのサービスが「猫にとって」どうであるのか?という疑問を覚えずにはいられません。
猫の習性を考慮した上での仕組みづくりが行われているのかどうかは、今後も見ていく必要性や対策を講じる必要性を強く感じております。主務省や管轄行政の動きや講じていく施策を確認した上で、更なる必要性を感じましたら当協会からも声を挙げたいと思います。
②7条4項の「終生飼養」に対して「手放すのも」の文言が、違法ではないか?
(動物の所有者又は占有者の責務等)
第七条
4 動物の所有者は、その所有する動物の飼養又は保管の目的等を達する上で支障を及ぼさない範囲で、できる限り、当該動物がその命を終えるまで適切に飼養すること(以下「終生飼養」という。)に努めなければならない。
「終生飼養」は、命を終えるその時まで飼養責任を全うする…私たちは、そう考えています。しかし飼い主さまが先に命を終えるケースもあります。その時は、次の飼い主を決めネゴシエーションした上で、周囲に示しておくことも「終生飼養」を全うする行為だと考えます。
当団体では、被災地支援の経験を持つ者がおります。被災し怪我や病気が悪化したり、明日の暮らしも見えなかったりする中で「やむおえず」ペットを手放す選択をされる飼い主さまもいます。その時に私たちが気をつけていることは、本当に「最善であるのか」を飼い主さまの中で考えて頂くことです。最善には「次の飼い主を一緒に探す」「何か手放さずに済む方法がないか一緒に考える」などの命とともにある「責任」を持ち続けた上での「最善の選択」を行って頂きます。また飼養責任を手放す「過程」を可能な限り考えて頂くことも、とても大切にしています。
上記は、私たちの仲間が動物愛護センターにて「ボランティアトリミング」を行っている写真です。
新しい飼い主さまに出会えるよう、心を込めて洗っています。
洗いながら猫の体調や毛づや、四肢などの体のこと、性格などなど多くのことを観察しています。
またセンターには獣医師もおり、日々の体調管理などを行った上で、面談や飼うための説明などを経て「譲渡」が行われていきます。
その後は、動物病院や、私たちのような地域にいるペットの専門職などと関わりながら、ペットとともにある生活を「家族」として過ごしてくださっていると心から信じております。
少し脱線しましたが、ねこホーダイに対する意見として「高齢になっても飼いたい」「殺処分になるより良いではないか」「保護猫の行き先を確保するための手段の1つ」などなど、社会に大きな質疑を投げかけています。では、これが「人」だったならば、どうでしょうか?保護児童の預け先が不足しているため、里親制度の1つとしてサブスクを始めました!などと言おうものならば、そもそも法や道徳、倫理に反しますし世界から批判が起こる可能性もあると考えます。それが「猫」ならばまかり通ってしまうことも、飼っている飼っていないに関係なく社会で考えていく必要性があると、そう私たちは思います。
いずれにしましても、当協会では「ペットの命」に関わる獣医療の人材として経過を必ず追って参ります。そして環境省や管轄行政の動きなどを踏まえた上で「猫のサブスク」がビジネスとして世に放たれた背景を分析し、ひととペットの共生社会の仕組みや制度、地域で行っていることなどを鑑みて、対策を講じる機会と捉えたいと思います。
最後までお読み下さりありがとうございました。
2022年12月27日(火)
代表理事 西村裕子